映画 シェルブールの雨傘 感想
この映画を観たのは2回目です。今回観た感想を書きたいと思います。〈ネタバレあり〉
ストーリーを簡単に言ってしまうと、
17歳の若い娘、ジュヌビエーヴと若い男、ギイがフランスの港町で恋をし、ギイが軍に召集されたため離れ離れとなり、その間にギイの子を妊娠したジュヌビエーヴが、様々な不安や迷いから別の男と結婚し、愛し合っていた2人は結ばれることなくお互い別の家庭をもつことになる…
という感じです。
シェルブールの雨傘 デジタルリマスター版(2枚組) [DVD]
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今回は気になったところについて書いていきます。
まず、冒頭の傘のシーン。
雨の降るシェルブールの町に色とりどりの傘。
最初から切ないメロディーで雨が降っている場面なので、ハッピーエンドにならない予感がしてきます。
人にもよると思いますが、雨はあまり明るい気分にはならないですよね。
そしてつっこんでおきたいのは、2人が少なくとも2年間離れ離れになってしまうのに子どもをつくることです。ここはやはり若さゆえの浅はかさなのでしょうか。お互いに相手しか結婚はあり得ないと信じきって、なおかつ、離れてしまう前のさびしさや不安からくる勢いもあったのかもしれません。
それから、ギイのためなら死んでもいいというほどギイを愛していたジュヌビエーヴが、かなり悩んで苦しんだとはいえ、案外あっさりカサールの求婚を受け入れること。
ずっとあなたを待っているって言ったやん。ひどいよ、ジュヌビエーヴ。
とも思ってしまいますが、これにはジュヌビエーヴにも彼女なりの事情があります。
ギイが戦場へと行ってしまった後、ジュヌビエーヴの元にはなかなかギイからの手紙が届きません。
離れ離れとなってしまいお互いの気持ちを確かめ合うことができないため、ギイがまだ自分を愛しているのかどうか、不安になります。
一緒にいたころのギイとジュヌビエーヴは、ぴったりと寄り添って歩いたり、町中でも抱き合ったりキスしたり、ラブラブでした。特に、「ジュテーム」とはっきり言葉で愛を表現しています。
そこから急に会えなくなったのだから、ジュヌビエーヴの気持ちは当然だと思います。しかし、ジュヌビエーヴ(もしくはギイも)の若さも関係していたと思います。そばにいて、相手からはっきり「愛している」と言われないと、愛を確信することができない。まだ17歳だし、本当には愛が理解できていない部分もあったのではないかと思います。
そして、そんなジュヌビエーヴの不安を煽るような発言をする母親も、ジュヌビエーヴのカサールとの結婚の決断に影響を及ぼしています。
母親としては、本当に娘の幸せを想ってのことでしょうが、母親の発言はいちいちジュヌビエーヴを悩ませます。
母親はどちらかというと自動車修理工であるギイのことをよく思っていないし、娘がきちんとした父親がのいないまま子どもを産むことになるのに気を揉みます。そしてここでタイミングよく現れるのが、自分の傘屋の窮地を救ってくれたカサールです。彼は裕福な宝石商です。苦労してきた自分のようになって欲しくない、娘には裕福な結婚をしてほしい。もし娘がカサールと結婚したら、自分の生活も楽になる。母親はもしかしたらそうも考えていたかもしれません。
でも実はカサールが娘に求婚するまでは、母親自身がカサールに気があった(映画でははっきりとはでていませんが、そう見えました)というのが、ちょっとおもしろいところです^ ^
おそらく、母親の影響もあり、ジュヌビエーヴ自身もいつ帰ってくるのかわからない父親の子どもを産むことに不安があったと思います。ただえさえ、ギイからの便りが少ないわけですから。
そんなところに現れたカサールは、ジュヌビエーヴを迷わせます。
彼は他の男の子どもを身ごもった彼女を、それでも愛しているから受け止めると言います。
それに母親もカサールとの結婚を推してきます。
ギイがいつ戻るかわからない、しかも自分をまだ愛しているのかもわからない不安。子どもや自分の将来のこと。そして母親と傘屋のこと。カサールの誠実さ。
すべてを考慮すると、一番いいのはカサールと結婚すること。頭ではわかっていることなのに、ギイとの愛が忘れられない。
悩んだ末に選んだのは、現実的な、カサールとの結婚でした。
本能より理性が勝ったのでしょう。
ギイがかわいそうな気もしますが、彼らはこういう運命となりました。
ジュヌビエーヴが結婚してパリに移った後、シェルブールの町に戻ったギイは、しばらく荒れます。戦場で辛い経験をした後、愛していた彼女に捨てられたのですから気持ちはわかります。
待っててくれるって言ったのに。
そんな彼ですが、彼を本当に愛してくれる女性、マドレーヌのおかげで立ち直ります。そして、夢だった自分のガソリンスタンドを持ち、マドレーヌとの間に男の子も生まれ、ささやかで幸せな家庭も持ちます。
そしてラストの場面。
ジュヌビエーヴとギイの再会です。
このシーンにおいては、解釈に迷います。
ささやかながらも幸せな家庭をもったギイと、母親を亡くし、裕福そうではあっても幸福そうには見えないジュヌビエーヴの対比にもみえます。しかし、ギイが自分の子どもに元恋人ジュヌビエーヴと自分たちの子どもにつけようと話していた名前をつけていた点が気になります。
しかしやはり、最後のほうの、ギイの家族の幸せそうな様子と、車で去っていくジュヌビエーヴの不幸そうな様子を見る限り、幸せをつかんだのはギイなのかなと感じました。ギイが敢えてあの名前を自分の子どもにつけたのは、ジュヌビエーヴのことはやはり少し忘れられないからで、だからと言って、ギイはまだジュヌビエーヴを愛しているというわけではなく、若かった自分の、一種の思い出のようなものかもしれません。
結論として、ギイは幸せになり、ジュヌビエーヴは裕福ではあるものの、幸せにはなれなかった
というのが、ラストの再会のシーンにおける、今の私なりの解釈です。
映画って、観るときその時々で感想や解釈が変わってしまいますよね。
今の私はこんな感想を持ちました(^^)
多分、次に観るときはまた違った感想を持つのではないかな?
今回は主にジュヌビエーヴに関する感想で、他の大事な登場人物にあまり触れていないので、今度いつかマドレーヌについての感想も書きたいと思います。
長文失礼しました!