このサイテーな世界の終わり The End of the F***ing World ネタバレ・感想

The End of the F***ing World season1 (2017) 

映画の感想はブログでは長らく書いていなかったのですが、久しぶりに書く気になった作品があったので(ドラマですが)、今回はNetflixオリジナルドラマの「このサイテーな世界の終わり」(原題:The End of the F***ing World)を自己満で紹介、おすすめしていきます。

 

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「このサイテーな世界の終わり」のあらすじ

 主人公は自分はサイコパスだと思い込んでいる17歳のジェームズと、家庭内で疎外感を感じて逃げだそうとしている同じく17歳のアリッサの2人。ある日アリッサはなんとなく気になったジェームズを、もしかしたら愛せるかもしれないと、ひどい家庭環境から逃げ出す一つの砦としてとらえるようになる。そしてとうとう苦しい状況に耐えられなくなったアリッサは、ほとんど知り合ったばかりのジェームズを連れて家出する。

 一方のジェームズは、向こうからガツガツやってくるアリッサに戸惑いつつも、断るのも拒絶するのもできない性格からなるがままに身を任せてアリッサと一緒に逃避行にでることになる。とはいえジェームズのほうも全くアリッサに惹かれていないわけではなく、初めて殺す人にぴったりだと思い、アリッサと行動する間に殺す隙を狙っている。

 

 幼い頃に受けた心の傷から、心を閉ざしたジェームズは、何かを”感じる”ことができなくなっていた。そのため自分はサイコパスだと思い込み、これまでに何度も動物を殺してきた。そこへアリッサというまだ殺したことのない人を殺す機会が転がり込んできたのだ。だけど気づけばアリッサの存在がジェームズの閉ざされた心を開いていく。ジェームズは自分の心の変化に戸惑うが、そんな心の変化に折り合いをつけられる前に事件が起こり、事態は一変する。

 

ジェームズは初めての人殺しに成功する。

しかし相手はアリッサではない。

 

アリッサを襲おうとした本物の殺人鬼を、アリッサを殺すために持っていた狩猟用のナイフで刺して人殺しに成功する。

 

そこから2人の逃走が始まる。

 

 初めて人を殺してみて、思っていたのと違ったと感じたジェームズ。次第に自分を救ってくれたのがアリッサで、自分にとって必要だと気づく。

 一方ジェームズが男を刺したことで殺人を犯した事への恐怖とジェームズへの恐怖を感じ、ジェームズをおいて一人で逃げ出すアリッサ。でも一人でいるうちにやはり自分にはジェームズが必要だと感じ、ジェームズのもとへ戻り、また一緒に逃避行を続ける。

 

 2人が心を通わす一方、隠したはずの殺人は隠しきれておらず、ジェームズとアリッサは指名手配され行方を追われる。

  アリッサの実父の元へ逃げたアリッサとジェームズ。毎年バースデーカードを送ってくれる実父に、素敵であってほしいと期待するアリッサ。期待を裏切られることを心配していたが、2人を迎えてくれたアリッサの実父はアリッサがそうであってほしいと望んだような人に見えた。一見は。アリッサとジェームズが指名手配されていると知ったその実父はお金のために2人の情報を売ろうとする。

バースデーカードも本当はアリッサの母親が成り代わって送っていたものだった。

 

こんなサイテーな世界に、もうジェームズなしでは生きられないと確信するアリッサは、アリッサとジェームズの罪をできるだけ軽くしようとしてくれていた女性の警察官を殴り、ジェームズと2人で逃げ続けようとするが、ジェームズは殺人の罪を自分だけに負わせ、アリッサを救おうとする。

ラストは1人で銃を持ち、走って逃げるジェームズの姿が映し出され、銃声が響いて終わる。

 

2人のキャラクター性のよさ

この作品の良さの一つが主人公2人のキャラクター。

まずジェームズ

自分をサイコパスだと思い込んでるって、どういうキャラなの(笑)え、サイコパスって自分で自覚してるもの??と初めは可笑しく思っていたんですが、それもそのはず、ジェームズはサイコパスではありませんでした。幼い頃に母親が目の前で自殺するという衝撃的な経験を持ち、そのショックから感情が感じられなくなっていたのでした。

何も感じられないためか、ジェームズは人を殺そうとしてアリッサをターゲットにしますが、まさかそのターゲットがジェームズの感情を取り戻す存在になるとは。初めは殺そうと思っていた対象を好きになっていくっておもしろい。

 

またジェームズは不器用でもあります。

怒ったアリッサのご機嫌を取ろうと外でむしった花をカップに入れて、戻ってきたアリッサに差し出すところがお気に入りのシーン。

それからアリッサがジェームズを怖がっていることに気づき、自分は冷静だと示そうとしてバーガー屋に置いてある砂糖の袋を整理して並べて見せるという逆にこわい行動に至るところもツボです。

 

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次にアリッサは、

強気で他人の気持ちなんて気にしない、クールな女の子。学校では明るく元気でみんなの人気者タイプではなく、誰に対しても警戒していて話しかけられても無視してクールに振る舞い、ずっと1人でいそうなタイプ。

だけどそれは家庭環境が大いに影響していそう。家では義理父がアリッサを邪魔者扱いし、母親もそれを知っていて何もしません。

爆発寸前で他人の気持ちなんて考えてられない感じのアリッサ。

ただアリッサはなるがままに身を任せているジェームズとは違って自分から相手に働きかけたり、自分の思ったように行動することはできるようです。

こちらも人とうまく関わるのは苦手だけど生きていく力はありそう。

どうでもいい相手を傷つけたり物を盗んだりするのは気にしないけれど、迷子の女の子をわざわざ送り届けたり、大事なところでは良心を失っていないアリッサ。

 

こんな感じで、完全な悪じゃないけど世間でははみ出しモノになるであろう2人と、その周囲のゲスい人々のコントラストがおもしろいのです。 

 

ブラックユーモア

すでにサイコパスだと思い込んだジェームズが殺そうとしたアリッサではなく、アリッサを守ろうとして別の人を殺すことで念願の殺人に成功し、しかも殺そうと狙っていたアリッサによって人を思いやる気持ちも知るという設定そのものがブラックユーモアでおもしろいのですが、この作品はブラックコメディにカテゴライズされるだけあり、他にも諸所にブラックユーモアがちりばめられています。

 

 おもしろいのが、アリッサもジェームズも、本当に心配してくれて、気にかけてくれている人が身近にいたっていうこと。アリッサにとっては母親で、ジェームズにとっては父親。

アリッサの母親は娘を気にかけていないように初めは描かれているけれど、家出をしたあとのアリッサは母親を恋しそうにしているし、実父からバースデーカードが送られてきているように毎年細工するほどには母親はアリッサを気にかけてくれていたことが後になってわかります。

ジェームズの父親も初めはジェームズを全く理解していないように描かれているけれど、自身も妻の自殺で傷ついて、それを忘れるため、また傷ついたジェームズを気にかけてのふるまいであったとあとからジェームズも気付くこととなります。

 

 また、逆にいい人に見えた実父が実はろくでなしだったのも笑えます。彼はドラックディーラーをやっていてアリッサ以外にも別の家族がいるのにろくな仕事をしておらず、面倒をみずに適当に暮らしています。挙げ句の果てには賞金目当てに自分を頼ってきた娘を騙して通報するような人でした。

 

 それからアリッサがジェームズに怒っているときに出会った青年は、最低な人たちとも、クレイジーな主人公たちとも違ったごく普通の

純粋な人として映り、その純粋さが可愛く感じます。警察に取り調べを受けているときのやりとりが面白かったです。

 

最後に

 この作品は1話20分、全8話とコンパクトにまとまっていて、展開が早くテンポも良いのが魅力です。プロットがいいのはもちろんのこと、ビジュアルとしても最高です。ちょっとひんやりした画がクールで、アリッサのジャケットなど印象的なアイテムの抜かりもありません。それから音楽もいいです。この作品のサントラはイギリスのロックバンド、BlurGraham Coxonが担当したそうです。どの場面もぴったりな音楽が使われていてかっこいいです。

 正直初めは主人公たちがクレイジーすぎてついていけず、特にジェームズは動物を殺すような人物で受け入れられないと思っていましたが、物語がテンポよく進むためどんどん引き込まれ、気づけば主人公たちに感情移入するようになっていました。ラストはドタバタコメディ的に進み衝撃でしたが、期待を裏切らない終わりに満足しました。

とにかくおすすめです!