ラ・ラ・ランド 映画"LA LA LAND"感想

 

イムリーな映画、観てきました。

 

 今日アカデミー賞の発表がありましたね。

アカデミー賞大本命と言われていた「ラ・ラ・ランド」ですが、前代未聞のハプニングがあり一時は手にしたかに思われたアカデミー賞作品賞を逃しました。

 

なんと、プレゼンターに渡された結果の紙が作品賞なものでなく主演女優賞のものだったのです。

プレゼンターはエマ・ストーンの文字と共に書かれたラ・ラ・ランドの文字を読みました。

 

しかし本当の受賞作品はムーンライト。

ラ・ラ・ランド関係者は舞台に上がりスピーチまで始めたのに、事実を知らされ後ろに下がりました。

流石に可哀想でした…。

 

 

ここからネタバレあるのでまだ観てない方はご遠慮下さい。

 

 

私は天邪鬼だからなのか、良いと言われるものにはあまり期待しません。

実際これまで期待して観た映画にはがっかりし、あまり期待せずに観た映画の方が好きになること多かったので。

それに実は、期待はずれだったという感想もラ・ラ・ランドを観る前に聞いていたのであまり期待せずに観に行きました。

 

さて、感想を。

冒頭はカラフルな服装の人たちが夢と希望の歌を歌いながら踊ります。ここはこの映画の導入となっています。

出だしはまあまあだな、と思いました。

しかし、ストーリ前半。

どうもテンポが悪いような…と感じ、正直に言うと退屈してしまいました。

なんというか、ぶつ切り感があり流れが悪く心地悪い。

 

でも映画は割と最初はつまらないけど後から面白くなることあるよね!と自分に言い聞かせ、我慢しました。

 

すると期待した通り、後半になってだんだんとテンポの悪さを感じなくなりました。

セブとミアが付き合いだしてからいい感じに楽しめるようになりました。

 

夢と希望に溢れた二人。セブもミアも夢追い人。

二人はお互いにうまくいかない夢を持ち、多分それ故に惹かれ合った。

 

 

 

夢や希望はとっくに捨てた意地の悪い人ならきっとこの二人にこう言ってやりたくなるでしょう。

 

人生夢だけじゃ生きてけないよ。夢を追いかけられるのはお金と時間、そして強運のある人だけだよ。

 

 

実際セブもこれに気づいてしまいます。

やはり夢だけでは、愛だけでは生きていけません。

どれだけ純粋で無邪気な夢を持っていても、現実とは残酷です。

 

セブは自分の好きなジャズのお店を開いてミアは自作自演の舞台をつくって成功させる。

これが夢だったはずなのに、セブは生きるために信念を曲げてバント活動をします。

これが原因となり二人は喧嘩し、ミアはセブと住んでいた家を出ていきます。

 

でも多分セブは夢を捨てたわけではなかったんです。

非現実的な夢を持ったまま夢を夢で終わらせるのではなく、実現させるためには嫌なこともしなければならないと感じたのではないかと思います。

セブにとってはこれも夢の実現のための道。

でもそのことによってミアと一緒に過ごす時間を犠牲にしなければならない。

それにミアにはセブがなぜ嫌いなはずのバンドを続けるのか理解できない。

 

お互い愚かだと言われてしまうような夢を持ち、夢を捨てられない不遇の人だったはずの二人。

出会ったときは同じスタートだったはずなのに、セブの方が先に大人になってしまった。

 

ミアの舞台にセブは来ず、数少ない観客に舞台の酷評をされてしまったミアは傷ついて実家へと帰ってしまいます。

 

破局した形の二人。

しかしミアの舞台を観た人の中にミアを評価する人がいて、その人が映画のオーディションにミアを呼ぶためにセブに連絡してきます。

セブはミアにオーディションを受けるように説得するものの、これ以上傷つきたくないからと断るミア。

セブは俺が納得できる理由がないならオーディションを受けろと言ってオーディションの日にミアを迎えにきます。

 

 

結果的にミアはオーディションを受け、合格して女優の夢を叶えます。

 

5年後、ミアはセブではなく他の男性と結婚しており、その夫と食事に入った店で衝撃を受けます。

なんとそこはセブの開いた店だったのです。

しかも店名は付き合っていた頃にミアが考えたもの。

ミアに気づいたセブはミアとの思い出のピアノの曲を弾きます。

 

 

ここからがこの映画の全てでした。

 

ピアノの曲と共にセブとミアの頭に浮かぶのは理想の夢でした。

 

二人の出会いは曲を褒めようとしたミアにセブが八つ当たりするのではなく、キスをするというロマンチックな出会い。

 

セブへのバンドの誘いには見向きもしないで楽しい日々を二人で過ごし、ミアの舞台は満席で拍手喝采大絶賛。そこには勿論、人一倍大きな拍手をするセブがいる。

舞台の後すぐ、舞台の成功を喜び合うセブとミア。

 

女優になる夢を叶えてパリで撮影するミア。

パリでは素敵なジャズが聴ける。

ミアとセブは一緒にジャズを聴く。

 

二人は結婚し、子供にも恵まれる。

幸せな結婚生活の中、ミアは夫と通りがかりの店で素敵なピアノの曲を聴く。

その夫とは勿論セブ。 

 

 

これが理想の夢だった。

これが夢だったはずなのに。

どうしてミアの隣にいるのがセブではないのだろう。

どうしてセブの隣にいるのがミアではないのだろう。

 

出会ったときは純粋に夢を持ち、希望に溢れていた。

そしてその夢を叶えたとき一緒にいるのはお互いにお互いだと信じていた。

それなのに現実は違う。

確かにお互いに夢は叶えた。

でも理想ではなかった。

そばにいるのがお互いでないなんて出会った頃は知らなかった。

 

夢のために二人の愛を諦めたのは確かに自分たちだけれど、それでもやっぱり完全には忘れられない。

 

こうして夢が叶った今、そばにいるのがお互いだったらよかったのに。

 

でもこれでよかったんだ。

何かを得るには何かを犠牲にしなければならないことがある。

夢を叶えるためにはこうするしかなかったのだから。

 

こういった想いが伝わってきて、最後の最後で圧倒されました。

 

人には誰しも、こうしていればよかった、あんなことするんじゃなかった、と後悔することがあると思います。

でも全てを手に入れられるほど人生は甘くない。

私には予想外だったのですが、この映画は夢だけでなく現実も人生として描いていました。

 

全く別物ではあるのですが、ラストの切なさとかがちょっとだけシェルブールの雨傘に似てるな〜と思ってしまいました。

でもあれとは違うんです。

私の解釈では、シェルブールの雨傘ではジュヌビエーヴはラストで幸せではないですから。

セブとミアは犠牲にしたものもあるけれど、夢は叶えましたから。

 

 

こうして最後に振り返ってみると、夢と希望を象徴する冒頭シーンも退屈だと感じた前半も夢と希望でふわふわしていた二人の初めてのデートのシーンも二人の喧嘩とすれ違いも全部必要で、このラストのためにあったんだと感じました。

 

結局いらないシーンなんてなかったと思うし、意味がある映画でした。

元々あまり期待せずに観たせいもありますが、期待以上でした。

 

私の個人的な感想でしかありませんが、前半のテンポの悪さは私が期待したミュージカルの畳み掛けるような派手さがなかったからかなと思います。

私は淡々としたフランス映画が好きなのですが、この映画の前半はフランス映画特有の淡々とした雰囲気でもなければスケールが大きくて派手なミュージカルの雰囲気でもなかった。

冒頭は確かにミュージカル感ありましたが、その後のストーリー前半が勢いに欠けていたと思います。

ワンカットで撮ったというなら確かにすごいとは思うけれど、観ている側としてはもっと畳み掛けるような勢いと流れが欲しかった、という感じです。

とはいえ、ラストの二人の理想の夢の部分は演出も良かったし勢いもありテンポも良かったです。

 

別に俳優の歌やダンスを貶してるわけではないんですよ。

二人ともうまかったし、ものすごい努力があったんだと思う。

でも映画の宣伝の仕方が違うんじゃないかと思います。私だけかもしれないけど、あの宣伝文句をみると、夢と希望に溢れててド派手ででハッピーなエンターテイメント映画なのかなと思ってしまう気がします。

でも実際にみてみると印象が違いました。

実際にみてみると、夢と希望のエンターテイメントとしてのミュージカル映画というより、現実を描くためにミュージカル形式を用いて効果的に表現したよという感じの映画でした。

逆に意外性を持たせたいという狙いがあったのかもしれないし、私が勝手に誤った捉え方をしていただけかもしれないし、なんとも言えませんが。

 

 

話を戻すと、色彩や冒頭の演出もよかったと思います。

また、ミアとうまくいかなくなってしまったセブに度々姉だったか妹だったかの幸せな家庭の状況が知らされるところとか効果的だと思いました。

 

 

この映画にもしもナレーションが入っていたら、ここまで楽しめなかったと思います。

詳しい説明がないからこそ、面白かったです。

そして夢と希望でハッピー!!

というだけでなく、現実もきちんと描いたところにこの映画の意味があると思います。

 

 

それぞれ観た人によって色々な感想があると思います。

これで私の勝手な感想を終わりたいと思います。